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嗚呼、泥沼回顧録

其の壱百四拾七 ~逃避癖~

山田晃士 ~逃避癖~
逃避したい。

世間の皆様方に比べれば、さほど忙しい訳でも無いくせに、そもそもが生粋のナマケモノ故、全
てを投げ出し、消えてしまいたい欲求が、時折抑えきれなくなる。

アブナイ、アブナイ。駄目な自分は重々承知の上、どうにも出来ない。

表現者達は、誰しもが己の活動を己で総括し、充足させようと努める。
絵描きは絵を書き、舞踏家は踊り、随筆家は筆を執り、演奏家は奏で、唄うたいは唄う。
どうにもならない自我を抱えながらも、それが魂を救済してくれる。
バランスを崩さぬ様に、偉大なる矛盾と向き合ってゆく。
逃避しているバヤイではないのだ。

表現者でありたいと願いつつも、
私の中にはもう一つ“怠惰に堕ちゆく魂”がどっかりと居座っている。
こいつは中々の厄介者で、かなりしぶとい。三つ子の魂地獄まで。
今までも何回かアブナイ目に遭った。
バンドを解散した時、事務所を離れた時、レコード会社を離れた時、愛が破滅した時…。
ビンチの時ばかりではない、全てが上手く行き過ぎてる時にも顔を出す。
その都度、奈落の手前で引き返せたのは、私の気の小ささというか、臆病さというか、煮え切ら
なさというか、やはり色んな意味で、色んな方面に未練タラタラだったからだと思う。
自分が可愛かったのだ。

そんな自己愛も年齢を重ねると共に薄くなって来ているのを実感する。
ドウデモイイカナ、な自分が幅を利かせ始めている、確実に。やばいなあ。
以前にも増して、ブコウスキーやつげ義春が切実に身に沁みる。
まあ、そんな事言っている時点で、まだまだ大丈夫なんだろうが。

今の内に、切羽詰まる前に、一人旅にでも行って来るか。
その方がイイのかもしれないな。

其の壱百四拾六 ~元旦を棒に振る~

山田晃士 ~元旦を棒に振る~
大晦日のガレージシャンソン歌手はギター一本担いで独り舞台。
一年最後の日に、こんな罰当たりな詩を唄わせてくれる場所があり、聴いて下さる方がいる。
誠に有難い事である。

つまり私の仕事納めは大晦日。
舞台が終わって、共演者・スタッフ達と“今年の仕事、お疲れ様でした”となる。
乾杯。この酒がとても美味い。

そして、すぐさま年が明け“今年もよろしくお願いします”となる。
乾杯。この酒が又、とても美味い。

普段は車で移動している為、飲めない事が多いので、この日ばかりは飲み倒す。
かなりヘベレケになり、3時~4時頃宴がお開きとなり、帰路に着く。
終夜走っている東横線に揺られ、寝過ごさない様に踏ん張り、最寄り駅へ到着。
私の家はそこから徒歩20分。かなり急な坂を上り、そして下る。
元旦の未明、ガレージシャンソン歌手はシルクハットを被り、ギターケースを抱え、
かなり重いキャリーカートを引き摺りながら、坂を上り、下る訳だ。
すれ違う人はほとんどいない。

その年最初の苦行だ。

疲労。
酔い。
寒い。
暗い。
重い。
独り。
しんどい。

お月さまを裏返し、呟く。
嗚呼、毎年こうだよなあ…。

ヘロヘロで棲家に辿り着いたガレージシャンソン歌手は、
初日の出を待つ事無く、寝床に潜り込み、泥の様に眠るのである。

そして元旦を棒に振るのだ。